2005年06月24日

§6−2 実際の実行は年度経営計画で行なうことになるが?

40c85405.JPG「よしこれでいこう」というビジョンを描き、そのビジョンをなんとしてでも実現するためには、「どうしてもこれを解決しなければならない!」という課題を戦略課題として明確にする。そして、ビジョンを実現する戦略課題を「戦略マップ」としてストーリーにして表現することが大切であることを述べてきました。

ところで、「この戦略は理論的ではないか?」という疑問を時折発する社長がおられます。戦略は、当然“実現性”ということを視野に入れながら検討していくのですが、あまり実現の可能性を強く押し出すとありきたりの戦略しか生まれてこないということがいえます。「なんだこれでは、いつもやっていることの強化に過ぎないではないか?」ということになり、戦略でもなんでもないものが出来上がるのです。従って、戦略を創造するためには、できるだけロジカルシンキングで考えた方がいいのです。さらに、ロジカルシンキングを超える“洞察力”があれば理想的ですね。これによってロジカルシンキングの壁を越えてよりクリエイテイブな戦略ができるのですが。戦略の実現性については、BSC及び戦略課題の具体化計画のときにしっかりと考えることがいいのです。

さて、戦略マップは、例えば3年先のビジョンを実現するための事業戦略をわかりやすく描くことになりますので、当然それは3年後の姿を実現させている戦略が描かれているわけです。それゆえ、これを2年目はどうなっているのか、1年目はどうなっているのか、とブレークダウンしなければなりません。
従来の現状から将来を考えるのとは対照的に、将来から現状を考えるという発想が根底にあります。いわゆる“演繹的に発想する”ということです。これも口で言うのは簡単なのですが、実際にプロジェクトメンバーは四苦八苦します。これは、「習うより慣れろ!」しかありません。

さて、その1年目の戦略を年度経営計画に落とし込むことになりますが、その年度経営計画に大変多くの問題があるのです。年度経営計画は、基本的に「今できること」を行なって最大限の業績を達成することになるのですが、そこではきめ細かな市場の読みと打ち手が必要となります。つまり、多くの年度経営計画は、市場や競合他社や自社という、いわゆる3Cの視点で見つめることがほとんど行なわれていないのです。しかも、最も大事なのは目標設定だと私は思っておりますが、この目標設定が非常に安易に行なわれすぎています。

つまり、苦労しつつビジョンや戦略を検討してきたのですが、それが年度経営計画の段階で生かされないという、アホみたいなことが起こっているオです。これは年度経営計画、あれは戦略と分けてしまっていいるのです。年度経営計画は、ビジョンを実現するための第一年目という位置づけにあることを忘れてしまうのです。なぜこういうことが起こるのかということですね。

常にいうことなのですが、企業・事業を経営する原点は、“夢”や“高い志”だということですが、これが言うほど簡単ではないということです。確かに、ビジョンや戦略を考えて、又考えてとやるのですが、それは“腹の底”から出てきたものではなく、理屈で綴っていくということが起こっているのです。そのため、年度経営計画の段階では、そのことが忘れ去られてしまうということだと思います。

結果として、年度経営計画は、目標は前年対比10%アップ(前年対比3%アップよりは評価できます。しかし、ビジョンで掲げた3年後の目標値を達成するためには年率25%くらい成長しないとダメなのですが)、それを従来どおりの総花的な打ち手を並べてやろうというのです。打ち手と目標が因果関係で結ぶことができないためにPDCAが回らないのです。毎月毎月、PDCAを行なうための会議が開かれるのですが、現実には回っていないのです。そこで何がチェックされているかというと、売上はどうだ?という数値だけですね。そうではなく、「こうしたらこうなるはずだ」という仮説をこそチェックして、場合によっては軌道修正が必要なのかどうかを吟味することなのですね。

年度経営計画は、以上のように二つの業務が並行して行なわれます。一つは、定常業務です。先ほどいったように「今できることを徹底的に行なって最大のの業績を上げて、年度目標を必達すること」です。今ひとつは、改革業務とでも言いますか、今期の業績にはならない、むしろ今期には費用だけが計上されるものです。これこそが3年後のビジョンを達成するための戦略課題の業務ということです。この両者に取り組むことが必要出ることは自明の理ですね。

このことは非常に大事なことです。従来の目標管理では「目先対応」となります。それを防ぐために、部門経営者は常に定常業務と改革業務を念頭に入れて計画を立案することです。まして、昨今の“成果主義”をとると目先対応せざるを得ない状況を作ることとなりますので注意が必要です。成果を査定して、それで報酬の差がつけられるわけですから、当然今期に成果が出ないようなことをわざわざやる人はいなくなりますよね。成果主義、もっと本質を言えば“成果査定主義”をやっていると組織がおかしくなるのは当然ですね。

さて、年度経営計画の話に戻します。私は、年度経営計画は部門経営者の“決意表明”であると位置づけしております。さらに、年度経営計画は“必達するもの”であると。「この事業を将来こうする。そのためにこの一年でここまで行くんだ!」ということです。そこで社長と“経営資源の配分”で交渉することとなるわけです。「従って、人を○人採用する。費用はこれだけ使う」という交渉です。もちろん社長がこれを了解したならば、何か不測の事態が起きたときは自ら乗り込んで目標達成に向けともに汗を流す覚悟が必要となります。権限を委譲するということはそういう緊張関係を作ることに他なりません。

私のやり方は、事業という部分ではなく“全体”を経営することを通じて部門経営者が自ら育つ「場」をつくる、そしてその中で大きな“修羅場”を越えていくことで経営者としての要件を身につけていくことを行なっていくわけです。それは単に「個人として結果を出す」ことだけではなく、「組織として結果を出す」ことが求められます。そこにはベースとしての“意志”と“リ−ダ−シップ”が必要なのです。

参考図は、現在のMBO(目標によるマネジメント)の欠点を補うために生まれてきたMBB(信念によるマネジメント)を示したものです。
  

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2005年06月18日

第6講 戦略を具体化するよい方法とは?                                   §6−1 戦略をストーリーにすることが第一歩

495899eb.JPG今までやったことのない思考を続け、「ビジョンの構築」と「戦略の創造」に悪戦苦闘の末、とにもかくにもやっとこぎつけたのです。つぎにやるべきことは、この戦略を出来るだけ多くの社員に理解と納得をしてもらわなければなりません。現実に戦略を実行していくのは彼らのなのですから。そして、つぎに社員の理解納得してもらった戦略を、現実に実行できるように具体的施策に落とし込むことです。

戦略を社員の皆さんに理解納得してもらうためには、戦略をストーリーにすることです。そして、そのために私は、「戦略マップ」を活用します。これは、今まで考えてきた戦略を、4つの視点で描こうというものです。最初は、目標数値となります。売上や利益、或はキャッシュフローやROAなどを示します。これを「財務の視点」といいます。

次に、「財務の視点」でしました目標を、どのような顧客に、どのような製品・サービスを提供することで達成するのかを示す必要があります。CVCCでいえば、C(真の顧客)とV(価値)を示すこととなります。従って、この第二の視点を「CとVの視点」といいます。

第三番目には、V(価値)をどのように実現するのかを、ビジネス・システム(企業活動における様々な機能を一気通貫につなげたもので、バリューチェーン価値連鎖ともいう)の視点から示すことです。提供価値であるVは、基本的に独自の価値を創造するというものですので、ビジネス・システムの工夫が必要となります。それは、コア・コンピタンスをどのように構築するのかをいうことでもあります。それゆえ、この第三の視点を「VとCCの視点」といいます。

最後に、第四の視点として、上記を達成するためには「人材」と「組織能力」の質と量を高めなければなりません。そこでこの視点を「人材と組織能力」の視点といいます。ここはCVCCを好循環させるための基盤となるエンジンといえます。

財務の視点、つまり数値目標を頭に置き、その目標を達成するために、第一にどの顧客に、どのような独自の価値を提供するかを明確にする。さらに、その独自の価値を創造するためのビジネスシステムを工夫し、構築する。最後には、以上を実現するためには有能な人材と組織能力を高めることが必要となります。これら4つの視点のそれぞれで戦略目標を明確に絞り込み、4つの視点の戦略目標を下から順番に因果関係で結びつけるのです。当然、因果関係で結びつけることの出来ない戦略目標は、戦略目標としてはおかしいということになるわけですね。

戦略マップを描くことで事業戦略自体が合理的な構造になっているのかどうかが確認できることになります。これによって戦略を一枚の簡潔な絵として示すことが可能となり、事業部門のすべての社員がコミュニケーションできる効果的なツールとなります。

戦略マップでは、ビジョン実現のための戦略をストーリーとして描きますが、4つの視点の時間軸が異なることに注意する必要があります。つまり、一番時間のかかるのが第4の視点の「人材と組織能力の視点」です。次に時間のかかるのが第3の「VとCCの視点」です。その次に時間のかかるのが第2の「CとV」の視点ということになります。その時間軸をきちっと押さえておくことが大切です。

私の場合、約10年ほどこの手法を活用しておりますが、現実には大きな壁が立ちはだかります。部門長の戦略思考が弱いために、当初は業務の羅列になってしまいます。また、それぞれの視点の戦略目標のレベルが合わないこともしばしばあります。また、PDCAを回していくことで、因果関係があると思っていたが実際には因果関係などなかった、ということもあります。或は因果関係に飛躍があり、大事な項目が漏れていたということもあります。全く想定していなかった項目が見つかることもあります。最初からうまくはいかないものですが、100点満点の30点くらいからでもスタートして、試行錯誤を繰り返すことで戦略マップに磨きがかかり、その活用の効果が認識されるのです。これは皆さんも是非活用していただければいいと思います。

戦略目標を描くことができたら、次にこれを具体的な施策に落とし込まなければなりません。それにはBSC(バランスド・スコアカード)を活用します。
これは戦略マップで描いた4つの視点のそれぞれの戦略目標をブレークダウンしていきます。まず戦略目標が達成されたかどうかを測るための尺度を示します。これを「成果指標」といいます。次に、戦略目標を達成するための重要成功要因を明確にします。これは成果指標の先行指標ともいえますね。そして重要成功要因をいくつかの具体的施策に落しこんでいきます。

戦略目標と成果指標は、部門経営者の責任と権限となります。そして具体的施策が部門メンバーの責任と権限となります。部門経営者と部門メンバーのコミュニケーションをつかさどるツールとして重要成功要因があると理解すればいいでしょう。

BSC(バランスド・スコアカード)については、現在では多くの書籍が出版されておりますので、1冊は是非読んでおく必要があります。これも最初は総花的になってしまったり、落とし込みがわかりにくかったり、多くの壁に突き当たりますが、利用価値の大きいものと思います。是非活用してください。

一般に目標管理を使って業績評価を行なう場合、どうしても目先対応になってしまいますが、戦略マップとBSCを活用することでこれを防ぐことが出来ます。将来のビジョン実現の目標があった上での、今年の目標と具体的施策があるということを認識することができます。いわゆるタコツボ化を防ぐことが大切ですね。

戦略マップの参考図を示しておりますが、これはBSCに関する書籍から引っ張り出したものです。書籍名や著者などが不明ですがご容赦ください。  
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2005年06月10日

§5−3 なぜ事業計画書をつくるのか

1522721c.JPGCVCC細胞分裂法を武器にして、まずは現状の事業を一つひとつの「意味のある事業」として細分化する。そして、その一つひとつについてCVCCのVである「顧客への提供価値」を尖らせ、将来にはオンリーワン企業として存在できるレベルにまで高めることを行なう。このプロセスでの思考のハードトレーニングによって、各事業(つまりは、各CVCC)の将来の目指す姿としてのビジョンが描けてくる。Vをここまで高めることができれば、顧客の期待を超えることが可能となる。そのVに貴重なお金を喜んで払ってくれる「C(真の顧客)」は存在する。そのVを実現するためには、1,2年以内にコア・コンピタンスを構築・強化しなければならない。というような筋書きが出来てくる。

さて、そこでここまでのプロセスをストーリーとして事業計画書に作成することが大切です。多くの激論を通じて、それぞれのCVCCを経営するのにふさわしいと思われる部門経営者がおのずと決められてくるものです。そのひとたちは、現在の事業部長かもしれませんし、製造課長かもしれませんし、総務課長かもしれません。極力メンバーの中から選ぶことがベターです。はじめにプロジェクトメンバーを選ぶときには、このようなことを念頭においておく必要があります。考えに考え、いつかそこに情熱・使命を感じるようになったものこそが、事業の経営を行なうのにふさわしい人材だからです。もちろん、すべてのプロジェクトでこのような人材が出揃うということではありません。

よりふさわしいであろうと選ばれた部門経営者が、「事業計画書」を作成することとなります。直接的には、作成した事業計画書をメンバーで更に討議していきます。もちろん、その事業が投資に値するものかどうかを「投資家」の立場で議論するためです。つまり、わが社のなけなしの経営資源を投入してやる価値のある事業なのかどうかを真剣に討議するわけです。もちろん最終的な判断は社長が行ないます。

事業計画書作成の目的は、それだけではありません。まず、部門経営者として事業を経営していく上で、「本当にこれでいいのか?」を自問自答することも大切なことです。事業の問題点を抽出して、成功の確率を高めることにもなります。更に、現実の経営は、自分ひとりで行なうわけではありません。部門メンバーの意欲的な参加も必要ですし、社長をはじめとする他の経営陣の支援も必要となってきます。従って、関係者に事業の内容を理解納得してもらうことが必要です。

また、事業計画はあくまで仮説で成り立っているわけですから実際に経営を行なうプロセスの中で、その進捗状況を管理しなければなりません。仮説の一つひとつが正しい方向に向かっているのかどうかなどをチェックすることですね。要するに、PDCAを回すということです。年度経営計画が小さなPDCAというなら、これは大きなPDCAを回すということですが、もっと深い意味があります。「ビジョンから始まるPDCAを回す」といったほうが適切な表現だといえます。この「ビジョンから始まるPDCAを回す」ことが部門経営者を育てるための非常に重要なプロセスとなります。

実は、プロジェクトメンバーの中で、今までに事業計画書を作成した人はいないというのが現実です。そこで、事業計画書の事例を見てもらい、事業計画書に記述するポイントを明確にしておく必要があります。ベンチャーブームもあって、書店に行けば「事業計画書のつくり方」という書籍が数冊は並んでいるので、どれか一冊を選んで勉強してもらうことも行ないます。これでプロジェクトメンバーは、今まで気づかなかった多くのことを学ぶことができます。

事業計画書を作成することの効果は、予想以上に大きいものがあります。今までの、プロジェクトメンバーの声から拾い出すと次のようなことがいえます。
1.事業を事業として考えることの重要性を知ることができる。今までは単に、売上を上げ利益を上げることを考えていたが、事業を経営することは、それとは次元が全く異なるということがわかる。2.事業を経営するためには、やはり事業に対する夢やロマン、信念がなければならないことがわかる。これらのものが事業経営の原点であるということです。3.つまりは、事業を経営するには、事業の将来の姿(目指すべきビジョン)を明確にしておかなければならないということです。4.すばらしい事業にしていくためには、つまりオンリーワンビジネスを行なうためにはCVCCが尖っていなければならない。5.そして、市場の環境変化に対応して、CVCCが常に進化し続けるようにすることこそがビジョンを実現するために必須の条件となる。6.情熱もさることながら、事業経営にはトップのコミットメント(神に誓うとか出来なければ腹を切るという意味だと解釈しておけばいいでしょう)がなければならない。7.事業は投資家が投資に値していると判断するものでなければならない。8.従って、事業とは最終的に数字で裏打ちされていなければならない。9.事業の経営は大変しんどいものだが、挑戦するに値することも知ることができた。

事業計画書によって各事業について討議したあと、複数の事業をプロダクト・ポートフォ・マネジメントによって全社最適のための、つまりは企業全体が成長発展していくための各事業の使命と資源配分を行なうこととなります。「企業(事業)構造変革プロジェクト」では、必ず事業計画書を作成することをお薦めします。




  
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2005年06月02日

§5−2 参考図 トルネードチャート

50ad660b.JPG不確実要因のなかの黒幕を探すためのトルネードチャートを参考として掲載いたします。  
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§5−2 参考図 確率分布曲線

43aabd78.JPGリスク管理をおこなう確率分布曲線の参考図を掲載いたします。  
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