2005年05月04日

4講 わが社の戦略課題を解決する方法とは?                           §4−1 戦略は何を単位に検討するのがいいのだろうか?

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さて、前回のセミナーで“CVCC細胞分裂法”を簡単に紹介しました。細胞分裂法といっているのには理由があります。売上高30億前後の企業の場合、多くは単一事業として経営を行なっておられます。複数の事業が存在する場合でも、組織として1部、2部というような部門名をつけておられますが、一つひとつを事業として経営されているケースはほとんどみられないのが現状です。事業として経営するのではなく、1部や2部の業績を管理するという経営が行なわれております。

単一事業であれ、複数事業であれ、“事業を明確に峻別してそれぞれの事業をしっかりと経営する”ということに私はこだわります。これは、事業を事業として経営することの大切さと同時に、私が目指す変化に敏感な企業を創るためには、小さな事業ユニットを作り、その事業を自己規律の徹底している“個を活かす組織、個が活きる組織”で経営することが必要となるからです。

ここで単一事業についていえば、本当に単一事業なのかという疑問を投げかけます。多くの場合、それは単一ではなく、複数の事業から構成されていることがわかることになります。どういうことかと申し上げますと、現状の売上高30億の中味を分けるのです。分けるときに、先のCVCC細胞分裂法を活用します。30億の中味をCVCCで分けていくことを行ないます。多くの場合、それを製品(群)別で分けることになりますが、製品(群)別がすべてとは限りません。

さて、製品(群)別にCVCCを定義していくと、異なったCVCCがいくつか出てきます。ここで大事なことは、CVCCが異なれば当然異なった事業が複数存在するということになります。なぜならCVCCこそが事業の単位となるからです。顧客(C)が異なる場合もあれば、(提供する)価値(V)が異なる場合もあるし、またコア・コンピタンス(CC)が異なる場合もあります。ここでのポイントは、1.CVCCを明確に定義すること。2.CVCCの市場の規模があまりにも小さくならない程度の粗さにすること、です。あまりに小さく区分して、市場規模が年間1億にもならないのでは、一つの事業として経営するには小さすぎますね。

現実にこの作業を通じてほとんどの企業では、明確にCVCCが定義できないということになります。そもそも真の顧客ってなんだろう?得意先が真の顧客とは限らないということが起こってきます。また、現在の売上の何パーセントが真の顧客に販売してのものなのかも気になるところです。ある企業では、50%位が真の顧客ではないということもありました。

次に、一番難しい価値の定義です。わが社が提供している価値とはなんだろうか?製品やサービスではありません。製品やサービスを通じてどのような価値をお客様は認めてくれているのだろうかということなんです。さらに、わが社が「価値は××××だ」といっても、必ずしもお客様が「そうですね!」ということにはならないのです。価値で最重要の問題は、業界での競争は、この価値で行なっているということだから、この価値で同業他社にいかに差別化するかが問われるのですが、どの企業も同じ価値しか定義できないことがわかってきます。つまり、わが社の価値ではなく、業界の価値を定義することになるのです。

コア・コンピタンスについていえば、そもそもコア・コンピタンスとは独自の価値を生み出す核となる競争力ですから価値があやふやな場合は、当然あやふやな価値を生み出すコア・コンピタンスは何かという、わけのわからないことになりますね。また、よく出てくるコア・コンピタンスは、「わが社の信頼性の高いことだ」「わが社のきめ細かな対応力だ」というのがあります。いっている信頼性とかきめ細かな対応そのものがよく理解できないですね。それが価値とどういう関係にあるのかとなると、「???」となります。

CVCC細胞分裂方で小さな事業ユニットをつくろうというのですが、実際にやってみるとなかなか大変な仕事となります。現状のCVCCは、先ほど述べましたように、業界のCVCCになってしまいます。まさにこれが売上や利益が低迷している原因なのです。価値(V)に独自性がないものですから、どうしても価格競争や「人間関係(これもわかったようなわからないような競争力です?)」ということになります。「このままではダメだ?」とプロジェクトメンバーは認識するのですが、このまま放っておくことはできません。当面、何らかの独自性をわが事業の価値(V)としてもたなければ低迷から脱出できないことになります。ここでメンバーは必至になって考えて、考えて、考え抜かなければなりません。「悩み、苦しみ、もがきながら全身から搾り出すしかない」作業なのです。「この会社に入社以来こんなに頭を使ったのははじめてです」と多くのメンバーはいいますが、実はこれこそが組織能力をレベルアップする必要条件なのです。

ここでメンバーの人たちが陥る罠は、「そんなことは今できないよ?」というものです。今できないことはやらないということであれば、いつまでたっても何も変わらないということで、ますますジリ貧になります。「確かに今はできないが、こういう価値を提供できれば勝てるのじゃないか?その価値を提供できるコア・コンピタンスを開発しよう!」ということでないと何のための戦略か、ですよね。

価値(V)を尖らせることは大変難しいのですが、できないということはありません。ほとんどのプロジェクトメンバーは業界の常識という固定観念に縛られていることが発想を貧弱なものにしていることは確かです。そこで、1.反対からみる。2.拡げてみる。3.縮める。4.足す、掛ける、統合する。5.引く、割る。6.究極のあるべき理想像を考える。7.100年先の社会をイメージする。8.全体像を描いてみる。9.認識と思考のパラダイムを変える。などの方法もとってみることがいいですね。

よくあることですが、「顧客のために・・・」とか「競合他社に比べて・・・」とか当然と思われる思考法は、これも大きな罠になります。なぜなら「顧客のために」と考えた途端、“顧客の立場”に立つのではなく、企業側から顧客を見た発想になるからですね。「競合他社の比べて」という発想も同じですね。私もそうですが、「顧客の立場になりきる」というのは難しいですね。だが必至になってやりましょうよ。

また、少なからずの成功を体験できたのは、日比野省三博士によるブレーク思考法です。これは、目的をドンドン掘り下げていって、その本質的なところまで考え抜くというものです。そして、本質的目的と全く別の何らかのコンセプトと統合(異種統合)するというものです。同じ目的を異分野に見出し、そのコンセプトせぷつを統合するするということですが、ちょっとわかりにくいと思います。博士の書籍がありますので一度読んでみてください。『超思考法「パパ・ママ」創造理論 「異種結婚」で大ヒット商品をつくる』講談社です。


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