2005年07月04日

第7講 戦略を策定・実行するための条件                                        §7−1 戦略を創造できるスキルがあるのか

05aefe3f.JPG構造変化が進行している市場の中で、企業の優劣は戦略の質の差によることは明白であろう。つまり、競合他社よりも質の高い戦略を創造できるかどうかが企業の盛衰を握るといってもいいのです。「質の高い戦略を創造できるスキルがわが社にあるのか?」という問題が浮かび上がります。特に、「企業・事業構造改革プロジェクト」をおこなっている、或はおこなっていく企業に、そのスキルが存在するのかどうかという問題です。

質の高い戦略を創造していくに当たってのスキルとしては、大きく二つのものがあります。一つは、われわれコンサルタントが指導することで身につけることのできるスキルがあります。ある程度の理解力と時間があれば内容のよい経営書を熟読することでも身につけることができるでしょう。このときには、いかに良書を選択するかが大切なことです。今ひとつは、われわれコンサルタントがいくら頑張っても身につけることのできないスキルがあります。

売上高30億円前後の中規模企業の場合、二つとも「存在しない?」という状態です。中規模企業の場合は、基本的に“少数主義(少数精鋭とはいえないが)”でないと成長発展は難しいことです。それゆえ、ある意味では現場主義に徹しております。この現場主義は狭い意味の現場主義ということです。自分に与えられた現場だけを一生懸命やるという意味ですね。周りを見回している余裕が無いのです。中規模企業だけのコンサルタントに絞り込んでいる私の場合は、この「存在しない」状態からスタートすることなのです。そこではまず最初の指導によって身につけることのできるスキルから入らざるをえません。

経営するということはどういうことなのか?経営は、今やっている仕事と何が違うのか?戦略とは何か?戦略でないものは何か?なぜ戦略が必要なのか?事業とは何か?事業を発展させるための必要にして十分な条件とは何か?PDCAを回すということはどういうことか?目標管理とは何か?仮説検証とはどういうことか?などなど、「要するにこういうことですね!」ということを理解することである程度のレベルまで到達できるものです。もちろんこれらは活用することで効用が発揮できるものですが、とりあえず知識として身につけておいて貰わなければならないものです。

実際の指導現場ではどういうことが起こっているのだろうか?これらの指導によって身につけることが容易なスキルを、ハード系のスキルと呼ぶとするならば、このハード系スキルをじっくりと講義していくわけです。「皆さんよくわかりましたか?」、「・・・・・?!?」、「理解できなかった人はいますか?」、「・・・・・」、「皆さんよく理解できたとして前に進みます」を繰り返していくわけですね。要するに“わかったようなわらないような状態”が続くのです。数ヶ月経って、「これは2ヶ月前に皆さんが学んだことですが○○さん、皆さんに説明してもらえますか?」という質問をしばしば行ないます。つまり、できるだけ皆さんの前で説明してもらうのです。

多くの企業で、人材育成のために“インプット”を行なってきたのではないでしょうか。しかし、期待したほどの成果が出ていないことはほとんどの企業で体験していることですね。私は、インプットではなく、“アウトプット”こそが人材育成に役立つとの信念を持っております。つまり、何かのテーマについて1時間講義させたり、商品の説明を1時間やらせたり、などなどをさせることこそが大事である思っております。それによって、彼らは必死に勉強するようになります。今後は、アウトプットを主体に人材育成を行なっていくことを提案いたします。

そのようなアウトプット主体の講義をして行くのですが、実は、実は、その説明がほとんどできないのですよ!?「あれ?皆さん理解したといっていたのではないですか?」実際の私の体験では、100の内理解できたのは20くらいですね。わからないが、わからないといわない。質問もしない。こういう状態が続くわけです。それがわかりながらも、ドンドン講義は続けていきます。そのうち、自分で色々勉強する人が出てくるのですね。「よい経営書を教えてもらえませんか?」と。うれしいですね。こういう人が一人出てくると、それが二人になり、三人になりとなっていくのです。

更に問題は、ソフト系のスキルです。これこそが中規模企業の成長発展を左右するスキルなんです。大きく三層構造になっていると思われます。ベースには、意志というか、しっかりとした志というかそういうものがあるかどうかです。次に考えられるのが、本質を読み取る能力や時代の流れを読み取る能力です。最後に、リ−ダ−シップという統率力ですね。このようなソフト系のスキルが“質の高い戦略の創造”に必要なのですね。

従来の業界の中で、業界の常識をフレームワークに、そこで何とかシェアを伸ばそうというのは、“質の高い戦略”とは言いません。もちろん企業を支えていく基礎力としては必要なものですが、それでは大きく企業変身を成し遂げて、顧客の進化していくニーズを解決して感動を共有することはできません。
従来型の同質的な戦略の中で競争する能力は、先ほどのハード系スキルによってある程度対応が可能です。

しかし、“質の高い戦略の創造”には、ソフト系のスキルがなければ極めて困難なことです。特に、強い意志と洞察力に基づいた“将来の構想”が、その後の戦略の質を大きく左右します。つまり、構想がつまらないと、戦略だってたいしたものにはなりません。だって、その戦略で折角築き上げたものが“つまらない構想”だからですよね。ギャベージイン、ギャベージアウトという言葉がありますが、それですよね。

成長発展を強く望む中規模企業としては、「それではあきらめるか?」というわけにはいきません。「なんとしてでもやろうよ!」「なんとしてでもすばらしいわが社を構築しようよ?」という情熱である程度カバーできます。強い情熱があれば、将来への構想が見えてくるのではないでしょうか。しかし、情熱をもって仕事に立ち向かうことのできる人がほとんどいないですね。それでもやらざるを得ません。やっていることが、やる気のある人を生み出す術ですから。





Posted by attack100oku at 11:01│Comments(0)TrackBack(1)

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ビンボーアタフター?【】at 2005年12月09日 14:44